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2014年06月14日

いとう みつこさん/小児科 医師

わたしは小学生のときに父の仕事の関係でイギリスに一家で渡り、中学の終わりごろに帰国した帰国子女です。東京外語大在学中から通訳の仕事をはじめ、歴代首相や国賓の通訳、テレビ報道の同時通訳も多々行い、5年前のオバマ大統領就任演説の同時通訳を担当するなどキャリアを積みました。会議通訳の仕事をしながら自分の好きな統合医療(西洋医学と東洋医学、自然療法を統合した医療)の勉強をしていたのですが、自分自身でも臨床活動をしたいと思い立ち、日本では医師免許がないと診断治療など実際的な医療活動ができないので、長男が小学校に入って少ししてから医学部に入りました。(欧米にはND=自然療法医という免許を取得すれば診断治療を含めた自然療法の実践ができるのですが日本では医師資格でしか診断治療はできません)

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会議通訳の仕事をしながら医学部に通い、同級生の多くが私の年齢の半分ほどの歳でしたが、解剖実習や病棟実習など楽しく過ごしたのを思い出します。
プレッシャーで吐き気を催すほど緊張した医師国家試験にも無事合格し、合格後の研修先として東大病院を受けて2年間研修し、そのまま東大の小児科に入局して病棟で白血病のこどもたちや重い神経疾患の子たちを担当し、新生児集中治療室もまわり、その後、一般小児科の臨床も行っています。

東大は特に重い病気の患者さんが多い中で、予防で発症を防ぐことができる病気に関しては、崖を落ちてしまってからではなく、崖に向かわないようにしていくことがより多くの人の長期の健康、ひいては一人一人の夢の実現につながると強く思うようになり、どうすれば予防医学を進められるのかを学ぶために東大の大学院で「公共健康医学」を専攻して疫学、生物統計、予防医学、健康教育などを勉強し、今年の3月に卒業しました。

今年の春からは東大大学院の「健康医療政策」という部署で特任研究員として勤めながら多くのひとたちが病気に向かわないようにするにはどうすればよいのかという視点で研究を始めており、できれば政策に生かせるように科学的なエビデンスを集めながら社会全体で健康維持増進できるようにと願っています。
小児科の外来も東大病院で担当し子供たちを診ています。
また、週末には医学系学会の同時通訳を行っています。

統合医療の勉強の一環として、健康の軸である「栄養、食事」について学びましたが、東大病院で医師として働く中で、患者さんたちに元気で長生きするための栄養や食についてお話しているうちにその内容をまとめて届けたいと考えて、昨年『天然ヘルシー調和食レシピ』という名で、家庭でできる簡単なレシピを集めた料理本を出しました。健康のために注意すべき食材、調理法を五つのキーワード「抗酸化」「抗糖化」「適切なカロリー摂取」「塩分控えめ」「ホールフード/オーガニック」を中心に、裏付けとなる栄養素などの情報も載せました。

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こどもの頃からの正しい食習慣、お腹に赤ちゃんのいる妊婦さんや授乳中のお母さんたちの偏りのない調和のとれた食事、働き盛り世代の食べ方、お年寄りのための元気にぼけないための栄養、など、それぞれの世代に適した食べ方がありますが、どの年齢にも共通して早期の老化・カラダの錆びを防ぐための抗酸化、血管・骨を丈夫に保つための抗糖化、炎症を進める塩分を控えることは大事です。どういった食材が抗酸化・抗糖化の力が高いのかを知って、できれば子供の時から自分で食事を作る能力を身に着けることで生きる力につながると考えています。また、微量ミネラルや食物繊維など、これまで注目度が比較的低かった観点からも新たな研究が進んでいることで、心身にとっての重要性がより明らかにされてきています。

また、大学院で学んだことの一つですが、食事だけでなく睡眠と運動と、そして良好な人間関係が心身の健康には大切で、ひととのつながりや社会との関わり(「ソーシャル・キャピタル」といいます)がより高いひとほど元気で長生きという研究が進んでいます。

信頼できるかかりつけのドクターと相談しながら、食・睡眠・運動をバランスよく実践して、友達や仲間・家族と一緒にいろいろな活動をすると、無理なく元気に長生きできそうですね。

これからも一層、多くの方の役に立てるような情報を提供できるように研究と臨床を進めていきたいと思います。

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《プロフィール》
いとう みつこ
有)アクエリアス 代表取締役社長・会議通訳者
東京大学医学部附属病院 小児科 医師、MPH(公衆衛生専門職)
東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学医療政策特任研究員

投稿者 green_heart : 2014年06月14日 10:30

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