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2015年02月16日

大林 京子さん/歯科医師

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ホリスティック栄養学への期待

 【良い歯でよく噛みよいからだ】この標語は、私が歯科医師になるよりもずっと以前から聞かされていたものです。ひょっとしたら百年前からあったのかもしれません。当たり前のことと思い深く考えることもなく、使ってきました。「だから、虫歯と歯周病にならない様に歯を磨きましょうね。」歯医者も患者さんも、何の疑問も持たずに受け入れてきました。 しかし、【何を】よく噛むのかについては、ほとんど興味を持たずに来てしまったのが現実です。

 一方、栄養士さんや内科の先生は【栄養のバランスを考えた】良いものを食べるように指導をされますが、【噛めているのか】【飲み込めているのか】にはあまり関心がないように見受けられます。
 同じお口の中に、何を入れてどのように噛んで飲み込むのかという一連の動作ですが、栄養士さんは口の手前まで、歯科医は口の中の歯の周辺だけ、飲み込むのどは耳鼻科の先生の守備範囲となっています。一人の人間のごく狭い範囲に少なくても3種類の職種が関与するのは、ややこしい話です。しかも病気になった時に3つの立場からバラバラに指示を出されたら當の患者さんご本人は困ってしまいます。

 20年近く前のことです。私達夫婦の仲人をしてくださった大学教授で糖尿病専門の内科のお医者様が脳出血で出勤途上の道路で倒れてしまいましたが、幸いにも発見が早く緊急手術で一命を取り留めることが出来ました。お見舞いに伺った時、意識ははっきりしているが呂律が回っていないので復職は難しいのではないかとの話が出ていました。ところが、私の見るところ脳の障害が有る様には思えませんでした。目の力やお顔の表情はしっかりしていらっしゃるので、はたと気がついてお口を開けて頂くと入れ歯がガタガタです。おまけに歯周病で歯もぐらついており、きちんと噛めていないのは直ぐに分かりました。食べることもしゃべることもできない口の状況でした。
 退院後、私の歯科医院に通院して頂き治療を終了して、以前にもましてお元気で診療や教育にご活躍されました。お会いするたびに「先生、お口を甘く見てはいけませんよ。もう少しで再起不能の診断が下されるところだったんですから・・・。糖尿の患者さんを厳しく指導されるのに、ご自分の食生活はどうなのですか?」と突っ込んで楽しんだものです。

 最近では食育の大切さが取り上げられ、いろいろな方面で広がりを見せています。
歯科の分野では、昔は虫歯予防のためのおやつ指導が主流でしたが、今ではメタボリックシンドロームの予防や改善のための栄養学的観点からの食事指導や、障害のあるお子さんや高齢者の摂食嚥下訓練といった口腔機能を改善するための取り組みが盛んになりつつあります。
 大林歯科小児歯科医院では、「口からはじめる健康作り」をモットーとして患者さんにお口の大切さをお話してきました。メディアでも歯周病と全身疾患の関係が取りざたされることが多く、皆さんの関心が高まっています。このような時に歯科での食事指導を行う意味は、健康づくりのために何をどのように摂取するかという問題を同時に解決することが出来る点にあります。栄養分を体内に吸収できるように粉砕し唾液と混ぜ合わせることが出来る口、つまり噛める口を作る役目を歯科が担っているからです。責任は重大です。今まではあまりに形や見た目の美しさを優先する歯科治療に偏っていたと反省しています。これからは、「噛む」働きに焦点を当てた治療を組み立てていく必要があると痛感しています。

 ではどのような栄養学を学んで、患者さんにお伝えしたらいいかと探していくうちにやっとたどり着いたのがホリスティック栄養学です。分子栄養学のコースで、とさかまさこ先生に巡り合ったのが幸いでした。解剖・生理学、基礎栄養学そして心身相関学までを総合的に捉えていく学問のあり方に感激しました。まだ始めたばかりですが、患者さんという見方ではなく、一人の人がその人らしい人生を生き生きと全うされることを支えるための健康づくりが出来るようにとの願いを持ちながら学ばせていただきたいと決心しています。

 コンビニの数より歯科医院が多いと言われるほど、歯科は地域に密着・密集しています。この様に歯科医院が沢山ある強みを活かして、地域の皆さんの健康の入り口の番人となってきめ細かに診療していけば、そして、本来の医科歯科連携が図れるようになれば、必ず地域全体が元気になっていくことでしょう。そんな時期の到来を期待してわくわくと心をときめかせています。

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大林 京子
医療法人きしぼ心和会 大林歯科小児歯科医院
〒811-3425 福岡県宗像市日の里6丁目16番7号
TEL:0940-36-1182
FAX:0940-37-2089
URL:http://www.obayashi-shika.com/

投稿者 green_heart : 09:37 | コメント (0)